それまではお世辞にも大したヒットのない(まだ若かった)メーカーだった「サンセイR&D(以下サンセイ)」。
このメーカーを一躍業界の主戦場に押し上げたのは、間違いなく「ガロ」だ。
これまでのガロの歴史と、これからサンセイはこのガロというコンテンツをどう扱っていけば良いかについて考えてみた。
という記事内容。
大きなお世話は百も承知です。
そもそもガロとは?
牙狼は大人向けの(といっても表現がエログロということでもない)特撮ヒーローものとして、深夜に放送されていた番組だ。
作品の出来は良く、ファンもしっかりとついている作品なのだが、いかんせん知名度は当時今一つだったと思う。
パチンコとして初代ガロが発売された後でも、「牙狼」を「ガロウ」と呼ぶ人が少なくなかった記憶がある。
それだけ、作品自体の知名度は高いものではなかったということ。
良作でも知名度が上がらないことは往々にしてあるし、ゴミみたいな作品がヒットすることも多い業界だから仕方がないことだ。
良い作品とは、ある種尖っているわけで、ボーっと生きている大衆には理解できない、刺さらないことも多いから。
ともあれ、そんな状況であったガロ。
この時点では版権料も決して高い方ではなかっただろう。
そこに目を付けたサンセイが、タイアップすることになった。
当時のサンセイの開発の中にガロのファンが居たかは謎だ。
初代ガロはまさかのバカ売れ
当時の雑誌にガロの広告が出た当初、「ガロってなに?」というのが大方の反応だった。
私もそうだった。
他のメーカーは「北斗の拳」「ルパン」など、誰もが名前ぐらいは一度は聞いたことがあるような作品とタイアップしていた。
特撮系で言えば「ウルトラマン」「仮面ライダー」などだ。
良く分からん作品と、いまいち強くはないメーカーであるサンセイの台。
世間の下馬評は高くはなかった。
現に、発売当初は導入台数は多くなかった(むしろ少なかった)。
しかし、蓋を開けてみると結果は違った。
その破壊的なスペックは等価交換が主流だった当時の世相と相まって、多くのユーザーを虜にしていった。
魔戒チャンス中の技術介入効果も高く、プロもこぞって打っていた。
私も大分稼がせてもらった。
初代ガロは簡単に言ってしまえば「超暴れん坊な羽根モノ」だ。
今でも分かるように言うなら「AKB」のもっと出玉速度が速くて、初当たりが重い台だと思ってもらえれば良い。
突入率は50%、継続率は82%で、全部の当たりが16ラウンド(約1800個)で、2ラウンド(玉ナシ)は一切なし。
バトル敗北時も16ラウンド分の出玉を得て終了できた。
魔戒(確変みたいなもの)中は、わざとV入賞を外さなければ、無駄な演出など一切なく数十秒で次の当たりが獲得できた。
時速3万発程度は十分に射程圏内のスピードだ。
通常時の演出も特にゴチャゴチャしておらず、とりあえず疑似3待ち。
そこから展開次第という分かりやすいシンプルなものだった。
「え!?」という期待していないところからの当たりもちょくちょくあり、単純だけど嫌味がない仕上がりだった。
この頃の演出バランスが最高だった。
まさか、剣や顔のおもちゃが台に搭載されるようになるとは、この頃は誰も思っていなかったことだろう。
どうあれ、初代ガロはその爆発力で市民権を得た。
結果、増大に増大を重ね、サンセイにとっての大ヒットマシーンとなった。
ここで、サンセイは勘違いをしなければ良かったのだが。
初代ガロからの系譜
初代ガロの爆発的なヒットによって、サンセイは資金力とキラーコンテンツを得ることが出来た。
これは企業として非常に喜ばしいことだ。
しかし、この初代ガロの成功は、あくまでもその驚異的な出玉力。
要は「スペック」にその全てがあったわけで、ガロというコンテンツである必要性は全くなかったのだ。
実績のあるガロという名前をわざわざ捨てる必要はない。
せっかく名のあるコンテンツが出来たのだから、それを育てていこうと思うのはマーケティングとして1つの正解だ。
だが、育てていく時に、常に「ガロというコンテンツだから売れているのではない」と、自重、自戒をしながら機械を作るべきだった。
初代ガロの次の「レッドレクイエム」は映画とのタイアップ。
映画のスポンサーにサンセイが名を連ねていたが、お世辞にもヒットはしなかった。
映画がヒットしてガロ自体の知名度が上がり、機械の方の認知度、稼働アップを見込んだのだろうが、失敗したわけだ。
次の「ガロ鋼」は、ここまでのガロの系譜でもある「終わる時もちゃんと玉が出る」という流れを捨てた台だ。
ロングSTという、パチンコの流れ(悪しき)を作った台でもある。
知名度などの問題で、ロングSTはこのガロ鋼が元祖という人もいるが、私が知る限りでは豊丸のウィッチブレードの方が先のはずだ。
このぐらいまでは、まだマシ。
だが、ここら辺からなかなかにオカシナ方向に進んでいく。
こっからのガロのナンバリングは、全て「ロングST」になる。(派生作品は別)
ロングSTは個人的にはパチンコの衰退、客離れは助長した張本人だと思っている。
ガロはどんどんズレていった
ロングだけに限らず、STという機能は基本的には「店側がウマい」システムだ。
STの先駆けである「パトラッシュ」ぐらいの台であればまだマシだが、ロングSTは完全に店側に有利なシステム。
初代ガロは店側にとってウマいスペックではなかった。
この時のサンセイは、会社としても力が弱い、タイアップの知名度も弱い。
ならば、ユーザー目線に立って、どれだけ冒険して新しいことができるか?
を考えていたと思える。
ユーザーの立場で面白い台を作ろうとしていた
しかし、初代ガロの大ヒットがこれを歪ませた。
サンセイにとって、ガロは「ホールに高値で量をさばける台」「儲かる台」になってしまった。
そうなると追及するのは「ユーザー目線の面白さ」ではなく「いかにホールが好む台か」になってしまう。
ホールが喜ぶ台は、基本的にユーザーが嫌いな台だ。
ガロが、ガロというタイアップだから売れるのだ。
という大きな勘違いもその後の歪みを大きくさせていった要因だろう。
先述の通り、初代が売れたのは「ガロだから」ではない。
あの強烈なスペックであれば、よほどヘンチクリンなタイアップを乗せなければ同様に売れた。
そしてガロという版権自体を育てることにも失敗したわけだ。
映画の失敗という形で。
であれば、この辺で気づけば良かった。
売れたのはガロの演出だからではない。
スペック重視、ユーザー目線が何よりも大事だという原点に立ち返る必要があった。
それが出来ていれば、ガロFINALでガロシリーズに終止符を打てたし、良い機械であり良いタイアップだったとして、パチンコ業界の歴史にヒーローとして絶頂で名を残せたはずだ。
FINALには「究極」という意味合いもあるが、ここで「最後」にすべきだった。
ガロ金色から、専用枠になり、みんなが知っている「剣」と「顔」のおもちゃが搭載されるようになった。
おかげで機械価格は高騰し、そのしわ寄せはユーザーからの回収という形になった。
この時は確かに話題性はあっただろう。
そんなバカなおもちゃをつけて機械代を高騰させようなんて考えついてもアホすぎて普通はやらないから。
ただ、そんなおもちゃは1回見れば飽きる。
出オチ芸人にバカみたいなギャラを払っているような状況だ。
最初のころは顔のおもちゃが出れば上を見る人もいたが、今ではやかましいだけで、見向きもされていない。
それでも金色はまだマシだった。
だってMAX機だったから。
要はここでも「スペック」が良かったからということだ。
次の「魔戒の華(だっけ?)」でMAXは規制で作れなくなった。
そこから今のガロになるわけだが、ミドルスペックになってからのガロの惨状は誰しもが知るところだろう。
ホール目線に立たず、常にユーザー目線を持ち、売れているのはガロという演出だからではなく、面白いスペックだから。
面白いスペックでなければ売れないという、ガロの原点を持っていれば、こんなことにはならずに済んだのだが。
ズレた思考を戻すことは難しいものだ。
ガロの復権はあるのか
規制のせいでガロが売れなくなった。なんていうとんでもない勘違いをしていれば、サンセイ自体が潰れるだけ。
少し頭をひねれば、「シンフォギア」などのスペックは出せるのだ。
一種二種混合もどきの台。
このスペックこそ「ガロの真骨頂」ではないか。
出玉力が初代に見劣りするのは仕方ない。
規制は1メーカーの力ではどうしようもないからだ。
だが、もしシンフォギアのスペックで、初代ガロを出していたらと考えるとどうだ?
結果は常に水物だが、爆発的に売れていた可能性は十分にある。
シンフォギアも初代ガロの時と同様に、タイアップ自体がそれほど強い台ではなかった。
現に、スロットのシンフォギアが大ゴケした。(あまりにもスペックがゴミだったからでもある)
顔や剣のムダなおもちゃを排除して、初代の演出バランスを基本的には踏襲。
初代の月影から引っ張ってきた扇役物の代わりに、FINALのガロの顔役物を付ければそれで十分。
これでガロを作れば初代なみに売れる可能性は十分にあるし、おもちゃを取っ払ってムダな演出やCG、実写(タレントのギャラ)も排除すれば、機械代は20万ぐらいは安くできる。
とにかく、ガロの復権には「サンセイのズレた感覚を元に戻す」ことが絶対条件だ。
キャプテン翼とか、どんだけサンセイの開発陣の頭がズレているか如実に分かるだろう。
まとめ
私は初代のガロが大好きだった。
だからこそ、今のサンセイとガロの見当違いに腹が立つ。
ディスっているのではなく、実力があると思うから目を覚ましてほしいという願望だ。
他のメーカーにも言えることだが、今の開発はただ「自己満足」しているだけだ。
自己満足の押し付けで騙せる客は低能ばかり。
低能は当然、多くが金を持っていないのだから、そんな人を相手にしても搾れる金額は知れているだろう。
今一度、ある程度の能力を持った人たちを満足させるだけのクオリティを考えるようにするべきなのだ。
パクリでも良い。
それがその台を一番面白くできるのであれば、恥じることなくパクれば良い。
そして、それを誰かにつつかれても胸を張って言えば良いじゃないか。
「面白いと思ったからパクった。だって、それをウチがこの台に付けたら絶対にもっと面白くできるから」
とね。
京楽なんかはここが上手い。
「学ぶ」は「マネぶ」からきている。
マネを恥ずかしいと思っている時点で、学ぶ姿勢がない、引いては「進歩する気がない」のだ。
ガロというコンテンツが初代のような輝きを取り戻すことを願ってやまない。
台枠だけ無駄に輝かせるのではなく。
牙狼~タスクオブゴッド~がホールにお目見え。
詳しくは以下のリンクから確認していただきたいですが、一言でいうなら。
「最悪」
牙狼の復権は望めないのでしょうか。